可視光通信…菓子交通神?お菓子と交通の神じゃないって

可視光通信とか眼や光にまつわるもろもろ

九十九里浜での灯台可視光通信実験(過去レポート-2)

立秋は過ぎたものの、まだまだ残暑厳し今日この頃、
蝉の声を聞〜くたびにぃ〜、目に浮かぶ九十九里浜ぁ〜♪椎名林檎 歌舞伎町の女王)

ということで、LED灯台可視光通信の過去話、2008年9月の九十九里での実験の話です。

(一連のLED灯台による可視光通信実験については、陸上自衛隊の滑走路で可視光通信実験のエントリをご参照ください)


その前に、可視光通信での長距離というと、
最近は、2010年の4月「LED可視光通信で20km超に挑戦中!」にある例とか、
アウトスタンディングテクノロジー可視光通信で世界トップ記録を達成」では13kmとか、当記事より凄いのは出ています。

この記事で紹介するのはたったの2km。しかもkbpsオーダー。
ただ、このときの実験の重要なポイントは、距離の追求ばかりでなく「イメージセンサ通信」の特質を活かして広いFOVを確保しながらの実証を行うということです。
(FOV:Field of View :実視野。この場合機器の受信可能範囲角度)
つまり、事前の光軸工事をきっちりやることなく、カメラや双眼鏡のように、ラフな手持ちで遠距離の送信源を捉えられるかというところが、イメージセンサ通信ベースでやっているミソです。
ですので、この日の実験も手持ちカメラや双眼鏡で限界といわれる10倍望遠程度までにレンズは抑えようということでやっております。(10倍くらいのズームとなると、対象を探せない、手振れで像がぶれすぎて使い物にならないといわれています)ですから、イメージセンサ通信としては、まだ、この2kmは世界記録かな?


イメージセンサ通信については、この資料などご参照
※本実験の公式な発表は、可視光通信コンソーシアムの灯台プロジェクトのリリースなど御覧ください。


さてということで、各社、九十九里に集結です。
海上保安庁さんは、いつも新しい 型の灯台が出ると九十九里のこの場所で、ボランティアのテスターさんを使って視認の主観評価を行ってい るそうで、折よくそこに可視光通信実験を相乗りさせて頂く形です。
我々は、通信が成立するか、成立したときの信号やエラー状況をとり、主観テスターの方たちに、灯質を評価してもらいます。


場所はこのあたり、、小松付近の河口にある桟橋に灯器(LED海上 ブイ)をおき、そこから南へ2kmほどが実験エリア。(実験としては2km地点まで徒歩、2-4kmは夕食をはさんでバスで移動しました)

大きな地図で見る

達成目標は持参したレンズと受信機の解像度、とここまでの予備実験から2km を必達として、もしかしたら4kmいっちゃう?ってところです。

当日の天気は曇ったり霧雨だったりで夜半のほうがくずれそうな感じ。
風も強く海岸沿いで空気も波でけぶっている感じで、いかにも透明度悪く、条件 悪い感じです。
実験はちょっとの霧雨くらいなら決行ですが、なにせ、試作機なので天気が悪 かったら、さすがに高い試作機をおシャカにできないので、年に一度の一発勝負ですが、申し訳ないけど可視光通信実験は中止することもあ りますと、十分に了解をとっておりました。


送信側灯台は、こういうふうにきっちりやぐらを立てます。

2マイル型と呼ばれる小型LED灯台(浮標等向け)に可視光通信用の変調を行ったものを、九十九里浜の海岸で、1km、2km、4kmと通信実験を行い、さらに、モニター参加者に、通常灯台との視認確認(見え方は違うか、ちらつきなど感じるのか)の評価実験を行うという内容です。
左3つが通常の灯台、右3つが可視光通信用です。灯色の違いのチェックのために複数設置します。

これはちょと離れたときの絵。


最初の1km受信ポイントまで徒歩移動する、うちの若いもん二名。後ろに小さく上記やぐらが見えます。



受信点側実験参加者(の半分くらい)、視認性評価を行う方々10名以上いらっしゃいます。


受信で必死な作業の様子。ちゃんと受信できるかな?通信エラー平気かな?受信波形どんなかな?って感じ・


1kmでの受信動作成功時の画面。

データ波形的には強烈な大気揺らぎが出ていて、実際ビットエラーはけっこ発生していますが、それを補う処理も入れてあり、動作成功となっています。実験データとしては単純で、「Japan Coast Gurad」を4秒ごとに1回の0.4秒
点滅の中で何十回も繰り返し送るテストデータになっています。(灯台やブイって点滅してます)


2km付近、途中少しの雨がふりましたときは、海上保安庁さんのスタッフの方々が、「雨は俺達が食い止める、おまえらはデータの受信を!」と男気を見せてビニールシートをこうやって雨よけを作ってくださいました。



結果からいくと、以前の陸上で行ったよりも強烈なシンチレーション(強度ゆらぎ)の中、イメージセンサ通信の距離実績を2kmまで伸ばし、ビットレートも1kbps(通信エリアの動作フレームレート4600fps)を達成すことができました。

なお、4kmに挑戦しましたが、これは望遠レンズでも1ドットを割るような中で、現状の試作機ではごくまれに受信できたもののほぼ、受信不可能という形でした。
いいわけすると、4kmのときは基本条件以上に送信側の雨がひどかったようで、かなり悪い条件でした。

あと、面白かったのは、08年5月に立川の陸上自衛隊飛行場でも行ったとき、アスファルトの大気揺らぎ は、空間的なゆらぎ(ビームワンダー=センサ上の通信座標位置があばれる)が大きかったのに対して、今回はビームワンダーはあまりなく、シンチレーション(強度的なゆら ぎ)が支配的な印象でした。(ここの体系的な測定データはできていないです)


なお、先の写真にもあったように視認の主観データの一般の方の参加者もいて、 その方たちが変調された、灯台をじっと見つめるのですが、今回の低速1kbpsを載せた2kHzパルスの変調は、「まったくちらつき感じない」という評価で終えることができました。



以上・・・・・・・・
 今夜からはこ〜の街で、可視光通信開発者が、じょうおぅ〜。・・・・・・になれるか?(椎名林檎 歌舞伎町の女王)