可視光通信…菓子交通神?お菓子と交通の神じゃないって

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天気晴朗ナレドモ波…高クナシ 〜横浜港船舶可視光通信実験のメモ〜

. - . . - - . - . ---- 「可視光通信見ユとの警報ニ接シ 可視光通信こんそーしあむハ直チニ出動 コレヲ受信セントス 本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」

※元ネタは「敵艦見ユトノ警報ニ接シ 連合艦隊ハ直チニ出動 コレヲ撃滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ波高シ」これは、東郷平八郎が丁字戦法を使ってバルチック艦隊を破った時の秋山参謀の名打電文といわれているものです。最後の一文が状況報告でありながら決戦を前にした心情描写になっているというところが名文たる所以らしいです。





・・・・ということで、書きそびれていた過去の実験メモ。
2011年12月に、横浜港で大黒ふ頭設置の可視光通信東大を船舶上から受信する実験で、可視光通信コンソーシアムが海上保安庁の全面協力により行った実験です。カシオと東芝さんがイメージセンサー通信の試作機をもちこんで、揺動船舶上から可視光通信変調灯台からkmオーダーの受信実験の行うというもの。



念押ししますが、レーザ光通信とかで送受信の光軸工事しちゃえば、光でkmなんて全然珍しくないですが、これは灯台やブイのように全周囲放射する光(=遠くから見たら点)を、受け側もまったりとして方向指定(=波に揺れる船上からせいぜい双眼鏡を構える程度のラフさ)で、通信を確立するってものすごく大変なことです。
この点で、海上保安庁では、通信ビットレートどうこういうまえに、海で灯台などを流用する長距離可視光通信の受信にはイメージセンサ通信しかない?と捉えてらっしゃるわけです。




ということで、まず、これがウチの試作機。サイバーパンキーにまとめてみました。PCにつないでますが、信号の捕捉やデコードは、何千fpsで動く専用開発のイメージセンサ通信モジュールが行なっていて、PCはほぼ表示を作っているだけ。生双眼鏡は、ただのホールドだというのが愛嬌。f^_^; (実際には、イメージセンサのモニタするー画像がモノクロで、表示レート自体は1fpsにもみたないので(通信処理は数千fpsなのに)あんまり、揺れが激しかったら、モニタスルー見るHMDかなぐりすてて、生眼で双眼鏡覗いて信号トラッキングやるための隠し技の意味もあります)


なにせ、海上のフィールドなんて初めてなんで、8,9月に予備実験を行いいろいろ調整などして、本番実験を、2011年12月7日に迎えました。
実験の目的が、いわば「試作機のできを通じての可視光通信の実力テスト」ですから、もし波タカシ(=揺動が激しすぎる)だと、こちらの試作機の性能追いつかず天気以上に風(=波)が気になっていましたが、当日はちょうどいい按配の、この時期としていたって平均的な海面状況でした。
(このころ、次月の1月にはラスベガスのCEショーで、ピカピカメラの技術発表をやる準備で目の回るような忙しさの中・・・はさておいて)



これが可視光の変調装置を入れ込んだ、2km用ブイの実験用改造機です。(変調周波数は2kHz。見た目にはもちろん変調わからない)大黒ふ頭のFと出てる船舶向けサインのタワー(説明してもらったのに忘れた)下に設置しました。




そして、これが当日に乗船しました、海上保安庁灯台見回り船そううん
試作機もいちおう実用を意識したので、ブリッジからそのまま、通信を受信。





そういう中で、500mあたりでまあまあ快調にとれている段階での受信結果がこれです。HMDでこの景色が見えるわけです。PC画面にも写っているので周囲の人にもわかります。

操作してる感はそれなりなのですが・・・とにかくモニタ表示のレートが遅すぎてかなりドランキーです。私は比較的船酔い強いのと、しっかり酔い止め薬を飲み、終始気が張ってたので大丈夫でしたが、船の上でちょっとこの試作機を試した人は「う、なんか酔いそう・・・」と即効でやめてました (^^;;;;


2kmでも多少苦労しながら一応捕捉に成功しましたが、かなりの文字化けでした。
ただ、イメージセンサ通信は、ビットエラーレートだS/Nだという前に、こういう実フィールドにおいて画像処理的な信号の捕捉やトラッキングのほうが本質的な技術なので、それが2km離れた船舶上から2マイル型の数百cd の輝度のもとを捉えられたことが確認できたのは大きな成果でした。

灯台は無理だけど、なんか低速色変調の新しい海上設備を考えてくれれば、同様の長距離受信機はもう例のスマホアプリが使えるんですが・・・そちらは、そうそう計画がないようで。

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可視光通信コンソーシアム 灯台サブプロジェクトページ


海保さんからも詳細なレポートが、先日出ています
海上保安庁 H23年度研究成果報告 「灯火を活用した新たな情報提供に関する調査研究」