可視光通信…菓子交通神?お菓子と交通の神じゃないって

可視光通信とか眼や光にまつわるもろもろ

災害救助と可視光通信

今週のお題東北地方太平洋沖地震

2011年 3月11日、日本は大変な災害に襲われ、我々は、今世紀世界でも歴史に残る大惨事を目の当たりにしました。被災された方々にお見舞いと安息をお祈りします。

ですが、我々は今後、世界の歴史に残る復興に立ち会えるはずでしょう。きっと。

ただ残念な事に、今おきている災害に、現状の可視光通信が出る幕がないのが歯がゆいところです。しかし、将来の災害においてこの技術が貢献できる方法ということで、考察してみようと思います。(あと自分がサラリーマン技術者ではありますが、開発者個人として、必ず取り組みたい領域ですので、ここに書いてしまって自分にプレッシャをかけとくという、企みでもあります。)


さて、報道を見聞きしたりググったりのした中で、現状の災害対策の中の問題点の中から、「可視光通信技術がぴったりの解決になる?」かもしれない事例がいくつか眼にとまりました。
「ヘリにこちらの存在を伝えたい、切迫した状況を伝えたい」というようなケースです。

このように、航空機など、見てくれた人に対して、アイコンタクトが取れてる的な状況なのに、伝えたい事がなかなか伝えられないということがあるようです。
上記の例の場合、建物の屋上という立地条件と、現場の方の機転で屋上に大きな文字をつくることで、気づいてもらえたようですが。
こういうとき、仮にお互いに携帯電話をもっていても、電話番号をやりとりできないし電話できません。(そもそも、たぶん、携帯インフラが復活してないと思われますが)
携帯電話じゃなくてトランシーバならもっと簡単ですが、それだって、あらかじめ、「このチャンネル(周波数)を使おうね!」って約束しとかないとだめです)


そこで、このような、地上と上空ヘリとのコミュニケーションを考えてみましょう。

  • 緊急性が高いので片方向でも良い
  • 距離は数百m単位、かつ見通し関係で、肉眼での確認作業の中で行われる。
  • (もしかしたら)携帯電話など通信インフラが機能していない場合がある。
  • 伝えたい情報量は少ない。文字にしたら数十文字でも良い。

(『見捨てられている避難グループです!物資不足。300人」「急病人1名!要手術。即時搬送求む!」あと逆に、『管理済み避難所No.xxx 災害本部登録済み』みたいのがわかってもいいかも)

  • そしてそのための準備や常備が現実的であること

という条件の通信があると災害救助に役立つであるようです。つまりこんな感じができたらイイ!ってことです。

見通しで眼でみえているという意味で、可視光通信はまさにうってつけです。
光の直進性と空間分解能は極めて高いので、「リンク確立」=「見通し関係で光を向ける」なのです。電話番号とか周波数チャンネルの確認とかまだるっこしいことは不要です。
そして、遠距離で視界イメージと一致といえば、可視光通信の中でも「イメージセンサ通信」の出番です。

最近の技術開発実績的としても、可視光通信コンソーシアムの「イメージセンサ通信」の実験では、可視光コンソーシアムで灯台を使って、2kmで1kbpsの伝送実験などの実績があります。
陸上自衛隊の滑走路で可視光通信実験
九十九里浜での灯台可視光通信実験(過去レポート-2

海上保安庁さんとやった実験は夜が多いのですが、以下はちょうど以前書いた記事の実験の時、まだ日が出ている夕刻に百mくらいでやった例です。こんなふうに昼間だって、その光が見えるなら遠距離で伝送できます。

このくらいの昼間。ズーム撮影したので、下記の試作機と画角が一致してないです。

試作機の受信画面。昼間ですがちゃんと灯台の点滅の中に仕込まれたテキスト情報を受信できてるところ。


以前テレ東さんにTV取材してもらった時(2007年)でさえ、75bpsと遅〜い伝速度ですが、たった1WのLED懐中電灯を日曜電子工作レベルで改造した送信機で、東京タワーの第2展望台から見通し300mの受信に成功しました。(古い昔話ついでに時間があれば、このTV取材のときの話も懐かしネタでまとめるかも。私のこの変なアイコンの成り立ちの経緯があります)

可視光とイメージセンサ通信の広い実用化と普及においては、光源・照明の話と、少し特殊な受信機(カメラ機器)をどうみんなが持ってもらうかという問題が常にあります。
でも、災害時用設備に特化すると、もしかしたら照明に流用できる、バッテリ駆動の照明を常備して、災害時には簡単な電文を設定してそれを繰り返し出力するような装置は、わりと取り扱いも製造も比較的容易にしかも現実的コストでできるかもしれません。あと、建物の外部照明が非常時に、情報が乗せて光れるってのもいいかもしれません。
(ただし、照明と完全に共用できるかは、設計によります。通信速度の関係で変調のフリッカが見える設定が最適という場合もあり、その場合は、通信と照明を共用することはできません)
いずれにしろ、数をばらまくべき送信側はたぶん割と容易。とにかく受信機が、特殊業務用向けとしても、性能とコストの折り合いのつけ方がポイントかもしれません。

ちなみに、少し規模の大きい避難所が近隣への位置特定のために、もっとパワーを使ったサーチライトを使うという手もあります。

wikipedia:サーチライトこのような強力なサーチライトだと、上空のヘリといわず、地上からも光のランドマークになり(パチンコ屋のように)しかもその光条に情報を載せることができます。

まあ〜本当は、国民全員モールス符号覚えればいんですけどね。でも、可視光通信ならそれをカメラが自動でやってくれるます。

光は古来から多くの「希望」を運びました。これからは、光が「情報」も届け、その情報が「希望」になることを願ってやみません。開発の一翼を担う者として、1日も早い実用化で社会の貢献になればと考えます。

    • 未来を予測する最良の方法は、未来を自分で創りだすことだ--

                 [ピーター・F・ドラッカー
だそうで・・・(「だそうで・・」じゃなく、「です!」だろ >自分)



参考)
災害対応と情報通信
http://www.lascom.or.jp/jichi/data/200715murosaki_siryou.pdf