可視光通信…菓子交通神?お菓子と交通の神じゃないって

可視光通信とか眼や光にまつわるもろもろ

ガンダムの光物理(なんでビームが横から見えるのか)

さて、以前の記事「ガンダムと可視光通信」につづいて、またビッグネームあやかりの、記事でございます。

上記事で最後に言及した、SF映画、アニメで散見する、光のビームがなぜか横から見える現象の謎についてです。

とはいえ、SFものにツッコミ入れようと思って、ビーム系兵器をちょっと調べてみたら、結局ただの入門解説記事になっちゃってます。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア. (C)創通エージェンシーサンライズ


まず、基本のおさらい。(理科の基礎がある人は読み飛ばしましょう)
●光は横から見えない の原則
まず原則。「光は横から見えません。」
難しくいうと、「光は伝搬方向以外にエネルギーを伝えない」し、「(基本的に光は)お互いに相互作用もしません」(※1)です。なので、進んでいる光自体は横に何か出してないし、観測のために、光に光を当てようが後光を焚こうが、その他放射エネルギー当てたりして光を観測することはできないのです。
なお、複数の光路で起きる現象に「干渉」といものがありますが、あれも横から見えるのには使えません。
干渉は、波長とか位相の条件を満たした複数の光によって、光が交わる場所で、強まったり弱まったりが起きる現象です。でも、これが起こる場所は、複数の光源からの光が観測点に届いている場合です。だから、確かに2つの光が交差する地点では、干渉により強弱が観測できますが、そもそも、発見したい光は届いてますので「横から見る」にはあたりません。
そして、干渉が発生しても、その後の光は、まったく何もなかったように、(干渉が起きた事実で、光の波がなんらかの変化をすることなく)光は進んでいきます。だから、光に横から何か光を交差させて、それを見れば・・ということはできません。

でも、ここで疑問を持つ方もいると思います。あれ?でも見えるよ? 光のビーム。なんかビームつうか光条いくらでも見たことあるよ。と思われることがあると思います。
でもこれは・・・・そうです。地球には大気があり、水蒸気や細かいチリにより、「ミー散乱」等々がおきて、本来の光の方向以外に向かう光がたくさん出ます。「チンダル現象」として理科でも出てきました。つまり、物質と相互作用した結果を見てるわけです。
これが、気象的に起きてる場合には、「薄明光線」と言われます。「天使の梯子」なんて名前がついています。(下図)


天使の梯子」出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
(これ書くのにちょっと調べて知ったのですが、「レンブラント光線」なんて言い方もあるのですね。カッコいー。さらには、「ヤコブの階段」(つまり amazon:ジェイコブス・ラダー)なんて言い方も。)


ということで、天使の梯子は大気中の散乱現象であり、光と物質の相互作用です。一条の光といえども大量の光子からなっていますから、物質と相互作用して方向が変わる光子の中に、自分の目玉に飛び込んで来るものがあると。で、その横道それるやつらが、連なって見えるので観測者の眼に結局、光条として見えるわけですね。

なお、光の反射のイメージって、ボールがなにか壁にぶつかり跳ね返るイメージかもしれませんが、物理的には一回光子が物質に吸収され、また再放出される現象です。
基本の理科解説が長くなってしまった。話を戻しましょう。


さて、大気中なら光のスジが横から見えるとしても、問題は宇宙戦闘でのビームでの話です。宇宙だと、かなり真空っぽいので、ふつう散乱させるものはありません。
だから、光がいくら満ちていても、自分の方に来る光が無い限り真っ黒です。だから、
(出典:NASA http://www.spaceref.com/news/viewsr.html?pid=28506
こういう風に宇宙船(というかこの写真はISS国際宇宙ステーションですが)は、漆黒に浮かび上がるわけです。この写真だと、地球はぼうっと、太陽から受けた光を大気でそこら中に光散乱して光りますから、地球は光って見えます。
でも地球から外で宇宙へ向かう光(この写真左から右に)は、もはや干渉する物質がないので、まっすぐ進んで見えません。
ただ、ISSに当たってそこで散乱した光はこのカメラの方向に飛んでくるわけです。(あとおそらく概ね右から左方向に太陽の光が来てる光も、横からは見えませんが、その光もISSに当たってカメラに飛び込んできて、漆黒の中に明るく浮かび上がるわけです。


宇宙兵器の光が横から見える!のは?
ということで、「宇宙戦闘なら、ビームは横から見えないはず」となります。 (まあ、モビルスーツとか宇宙船とか爆発したりすれば、相当まわりに大小の物質が撒き散らされているので、散乱する物質がたくさんありそうですが、そこはさておき)


が、あれ?SF映画とかアニメ、ビームだのサーベルだの横からバリバリ見えてますよね。では、今度はそこを考察。

wikipedia:ビームライフル (ガンダムシリーズ) によると、(ガンダムの)「ビームサーベルは、エネルギーCAPによって縮退寸前の高エネルギー状態で保持されたミノフスキー粒子(一説にはメガ粒子)をIフィールドによって収束し、ビーム状の刀身」ということだそうで…. ミノフスキー物理学がわからない私にはとんとわかりませんが、どうやら、「粒子を収束している」ようです。なので、発光については、蛍光灯と同じようなもののようです。ガラスでなく力場で収束するわけですが。

大同電設株式会社のWeb解説記事から転載させていただいてます。

つまり、ビームサーベルといっていますが、あれはビーム(光束)でなく、集積した物質発光みたいなもんなんで、全方向に光エネルギー出すのは全然OK。問題なしということになります。
なので、そもそも、「え?ビームが横から見える」と疑問に思わなくても良かったと。
そういえば、

で見るように、ガンダムの素早い振り下ろしで、めちゃめちゃ曲がってます。光をだしてるならこんな曲がるわけないですからね。(出展:バンダイAir Shock Battle 1/12 ビームサーベル」パッケージより)


確かに考えてみると、ビーム兵器関係って画面見たとき、恐らくたかだか数千とか数万km距離でズギューンとしっかり飛んでいくのが見えているから、もし電磁波であれば仮にターゲットが1万km先でも、約30msで到達するはずで、これはTVだと1コマですから、あんなに「ズギューン」とコンマ何秒も軌跡は見えないはずですから、やっぱりあれは粒子ビームだということがわかります。

そうそう、宇宙戦艦ヤマト、映画未見ですが、あれもTVアニメだとズギューンと光る波動が出ます。
だからあれも、物質を撃っているんでしょうか?
・・ですが、(子供のとき読んだんでうろ覚えですが)テレビアニメ後に読んだノベライズ版だと、波動砲って空間自体に直接影響を与えるような設定になっていて、「撃て〜」とやってから、見かけはなにも起こらず、「?」っていう間のあとに、敵艦隊がゆらっとゆらめいて、空間自体をなんか歪まされちゃって敵宇宙船ドが〜んとなっていた気がします。あれの方が凄いオーバテクノロジーって感じで怖かった気が・・。まあ、絵的にはなんですが。


ところで、ぜんぜん光の話じゃないけど、よく「宇宙で爆発が聞こえるのはおかしいww」ツッコミ見たことあります。「wwまあ勘弁して下さい」みたいなことも、スターウォーズのDVDのコメンタリーで製作者自身が言ってましたが、別におかしく無いと思うんですよね。観測者はなにか宇宙船の中や宇宙服の中にいるわけで、爆発で撒き散らされた物質やエネルギーが船殻をゆらして中の空気を振動させるはずで、自然だと思いますよね。


以上、特に斬新な発見もなかったですが、SFはけっこうちゃんとしてるってことでした。


なお、飛んでいる光のパルスを横から見るって研究はやられていて、
FTOPによる光の計測 とか、高強度フェムト秒レーザーパルスの石英中の伝播
ただ、これらはやっぱり物質雰囲気の中にいれてるんですよね。


以上、いろいろ書き散らしたものの物理ど素人なんで、本当は量子力学もちだすとなにかトリッキーな方法があるんでしょうか?ともあれ、間違いや、ひどい不勉強ありましたら、ぜひご指摘下さい。

※1 訂正しました。不勉強すみません。「電磁波は」を「光は」に修正しました。
電磁波と言ってしまうと、ガンマ線くらい周波数短く(エネルギーを高くすると)ふつうに光子同士の衝突で他の素粒子が創成されたりしますので、誤りです。なお、可視光程度の波長・エネルギーの場合でも、非常に低い確率ですが光子同士が相互作用する場合があるようです。